桃色ドクター
『絶対にあなたの元へ戻ってきます』と言う約束の紙があるわけじゃない。
いつ、どこで消えてしまうかわからないような約束。
今、何をしてるの?
ねぇ、瀬名先生。
バレンタインから1週間が経った週末に私は雅也に別れ話を持ちかけた。
「あんた女いるんでしょ?私も他に好きな人がいるから別れよう」
あっそ、ってあっさりOKだと思ったのに、雅也は悲しい顔をした。
「何今さら言ってんだよ。束縛しない関係だったから好き勝手に行動していただけで、別に他に好きな女なんかいね~よ」
「でも、私は好きな男ができた。それに、これ以上未来のない関係を続けたくない」
雅也のどこが好きだったのか、今また再確認している。
こういうところ。
憎たらしいのに、最後の最後で憎めないヤツ。
私をぎゅっと抱きしめて、涙を流して謝った。
「愛してるのは香織だけ・・・・・・」