桃色ドクター
荷物をまとめた。
まとめたけど、ここから出ていくつもりはない。
この家から出たくない理由は・・・
あの人は、この家を知っているから。
会いに来てくれるとすれば、この場所しかない。
だから、ここにいたい。
勝手だけど、それが本音。
「別れることになったら、どっちが出ていく?」
雅也は床にしゃがみ込んだまま、そんなことはどうでもいいと言った。
私は、雅也の背中にそっと触れた。
1年一緒に暮らしていると、情が生まれる。
愛ではない何かで結ばれている。
そのことに気付いていないふりはできない。