桃色ドクター
「あきらめてくれ」
仁ノ介の声を聞きながら、涙が頬を伝うのを感じた。
「あきらめられません」
その女性の声を思い出すことができた。
きっかけは香り。
甘いセクシーな香り。
そう。
瀬名整形外科の美人受付嬢。
彼女は最初から気になっていた。
そうか、瀬名仁ノ介に恋をしていたのか。
医者はさすがにもてるなぁ。
いろんな女をとっかえひっかえ……
客観的にその状況を見ている自分がいて、首を横に振って現実に戻る。
別に手を出したとは限らない。
ただ一方的に好きなだけだよね?