幼なじみ〜first love〜
――…空港のロビー。




スーツを着たサラリーマンや、旅行へ行く人たち…たくさんの人々が行き交う。




その中に、あたしたちも立っていた。




「絢音…、もぉここでいいよ」




「…うん」




繋いでた手が、そっと離れた。




「じゃあ…な」




「うん……」




蒼は、あたしに背を向け歩き出した。




次に会えるのは

きっと




約束の一年半後……




泣かない…

泣かない……




あたしが泣いたら

また蒼を不安にさせる




だから…もぉ少しだけ

堪えて




瞳から流れ落ちないで……―――




「蒼っ!!」




あたしは、大きな声で、3メートル先の蒼の背中に呼び掛けた。




立ち止まるけど、振り向かない蒼……




大きな蒼の背中に

叫んだ……




「大丈夫…っ…!」




お願い…

もぉちょっとだけ


涙…落ちないで




最後まで笑ってたい




蒼が大好きと言ってくれた

笑顔で……




手を振りたいから




背を向けたままの蒼に、走って思い切り抱きついた…――。




「お母さんの病気も…あたしたちのことも…絶対に…大丈夫……大丈夫だよ……」




「…う…ん……」




前を向いたままの蒼の声が、かすかに震えていた。




「…蒼がいたから、あたし今まで生きてこれた。だから…忘れないで…蒼は絶対に一人じゃないよ」




誰もいなくたって

あたしがいる




“2人でひとつ”




付き合いはじめた時

蒼があたしに言ってくれた言葉だよ?




あたしも同じ気持ち




だからね…そのまま蒼に返すよ




全てを捧げたい

全てを支えたい




かけがえのない君と




分けあいたい……
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