幼なじみ〜first love〜
その夜、沙羅は俺に黙って出掛けて行った。




俺はコンビニにでも行ったのかなと思っていた。




しかし、沙羅は、なかなかアパートに帰ってこなかった。




部屋の時計を見ると、0時を回っていた。




沙羅の携帯に電話をかけても、留守電になってしまう。




心配になって、俺は近くまで沙羅を探しに出掛けた。




昼間降っていた雨は、止んでいたが、夜空に星はひとつも見えなかった。




「寒…っ」




体が一瞬震えた。




北風が冷たい。昼間の雨が雪にならなかったのが不思議なくらい、気温はかなり冷え込んでいた。




何度、沙羅の携帯に電話をしても留守電だった。




沙羅に何かあったんじゃないかと、不安にかられていた……




ピリリリリ…―――




その時、沙羅からメールが届く。




その言葉を見て、俺は目の前が真っ暗になった。




――…




“さよなら…蒼”




……嫌な予感がした。




すぐに俺は、沙羅に電話をかける。




呼び出し音が鳴り続き、留守電になってしまう。




――…繋がらない。




俺は携帯を片手に握りしめ、走り出した。




沙羅…嘘だろ…?




やめてくれ……




いなくなる……




また…俺のせいで

いなくなる…?




また誰かが…


消えてしまう……




これ以上…誰も


失いたくない……




どうか…無事でいてくれ




沙羅……―――
< 840 / 1,010 >

この作品をシェア

pagetop