―愛彩―
『由里様がお亡くなりになられました』

篠宮家にその報せが届いたのは、一面を雪で覆われた寒い日でした。

由里様は肺の病いに侵され、亡くなられたのです。

入退院をなされていた事も、状態が悪かったという事実も、篠宮の家には何も届いてはいませんでした。

旦那様も雅之様も、深いご心痛を受けておいでのようでした。

一人の娘を亡くしたというだけではなく、今後、由里様の嫁ぎ先からの援助も見込めなくなるからでした。

由里様はお骨となって、篠宮家にお戻りになられたのです。

和人様は、人前では気丈に振る舞われていらっしゃいました。

その和人様が、お骨を抱きしめておられました。

ただ、由里様を抱きしめておいででした。

「和人様・・・。」

「大丈夫だよ。みちるさん。」

私に背中を向けながら、和人様はおっしゃいました。

「姉様は幸せだったのかな・・・。」

幸福になれるかは、自分の心掛け次第だとおっしゃられていた由里様。

その笑顔を見たのは、この間の事の様なのに。

由里様は23歳の若さで、この世を去ってしまわれたのです。

けれど・・・。

和人様の由里様への想いは、生涯続いていく事となるのです。
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