―愛彩―
「みちるさん。いいんだ。」

和人様は私を見て言いました。

「優花の望むことを、すべて叶えてやりたい。何でもしてやりたい。今はそういう気持ちなんだよ。」

私はただ黙っていました。

「優花は私に優しい時間をくれるんだよ。とても懐かしいものを・・・。」


―――そんな事は分かっていました。
あえて、おっしゃられなくとも。

優花さんと共に過ごす時間は、きっと由里様といた頃の。
篠宮のお屋敷にいた頃の懐かしい日々を思い出させている。

それは和人様にとっては幼い日に紡いでいた、心温まる時。

分かっていたのに、私は余計な口出しを・・・。

「しばらくの間の事だ。みちるさんには、心配かけないよ。」

和人様は、そう言って部屋を出ていかれました。

ひとり残された私の胸中には、込み上げてくるものがありました。


それは由里様に対するものでした。


――和人様はやはり、由里様を忘れてはいらっしゃなかった・・・。


私にとっては由里様も、一生を共にしてきた方のように思えました。

和人様だけではない。

由里様は、私の心の中にも住み続けていたのです。
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