三澤斗春と優しい殺意。



「………三澤さん」

「おー」


三澤はのんびりとした声を上げた。
事務所のソファーに寝そべっていたが、まだ寝る気はなかった。
起き上がる。


「薬物の反応はあったろ?」
「……はい」


三澤に比べて、長倉の声のトーンは低かった。


「ですが、毒物の反応はありませんでした」
「ほら、な」


長倉の凹んだ姿を見て、三澤は少し気をよくした。


「あんな優しい目の人が毒殺なんかしようとするわけない―――」

「でも、三澤さん!あの人は絶対に」

「長倉」


三澤は一つ、嘆息した。


「絶対なんて言葉は遣うもんじゃない。それは自分の目を曇らす」


長倉は三澤のどこからくるか分からない迫力にたじろいだ。
三澤は言葉を続ける。


「いいか。『絶対』なんて絶対にないんだよ!」


(さ、早速、使ってきたー!?)




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