女子高生夏希のイケメン観察記
それでも。
さっきまで智さんと繋がっていた手をぎゅっと握って、萎えそうな勇気を振り絞る。

「伊達政宗って知ってる?」

母が、僅かに目を見開いた。

「クロって、何のことか分かる?」

「……!」

母は、口を開く。
言葉にならない、声がその唇から漏れた。

母は、ゆらり、と。
柳のように揺らめいて立ち上がった。

「……お前、大内のものか」

ひしゃげた声が、気味悪く響く。

「お母さんっ!」

驚いた私は思わず声をあげた。

「夏希ちゃん?」

外で待機していた智さんが、部屋に足を踏み入れた。
その瞬間。

「お館様。
 ご無沙汰して、申し訳ありません」

母は、まるで大河ドラマに出てくる女優さながらに、膝を折って床に頭をこすりつけたのだ。

私と智さんは顔を見合わせて言葉を失う。

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