封印せし記憶


朝日奈静菜。

彼女は多少…どころか大いに変わっていると言わざるを得ない少女ではあるが、間違いなくこの物語の主人公である。


誰もが口を揃えて言う。
朝日奈静菜と会話が成立する事は皆無に近い。
と…

なにしろ話しかけてもまったく検討違いの答えが返ってくるのだから。
会話らしい会話が成立した事など、高校に入ってからの半年で数回あるかどうか。


それでも進学校である栄翠学園に通っているのは、成績だけは実に素晴らしいからだ。学年トップを誇るその頭脳はいったいどこからその知識を蓄えているのかと誰もが疑問を持っている。
授業など聞いている様子が全くないのだから当然の疑問だろう。

ただ飽きもせずに窓の外を眺め続け、ふと思い立ったように席を立ち帰っていく。
それが放課後、休憩時間、そして授業中であろうと、そんなことにはお構いなく。


学園側は最初でこそそれを咎めたが、静菜と話しをしても一向に解決せず、静菜の保護者に連絡をしても、そんな事は学校に任せると放任されてしまい、今ではもう誰も静菜を引き止める者はいない。


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