封印せし記憶
天敵


それから3日後。

今日も今日とて、静菜と和弥の下校時刻。


今日は静菜が和弥の教室でぼんやりと窓の外を眺めていた為、帰りが遅くなったようだ。
すでに教室には誰もおらず、運動部の生徒の声だけが遠くから聞こえてくる。
とは言っても、時刻はまだ16時半になる手前。

ゆるゆると歩く2人が、真っ白な外壁の校門を通り抜けたその時。
怒涛のような勢いで駆けてきた他校の女生徒が和弥に抱きついた。


「和弥っ!久しぶりっ!」

どこにいても聞こえるようなよく通る声で、和弥に抱きついた少女が言った。

「なっ……離れろっ!!」

和弥は相手が誰であるかということよりも、女に抱きつかれたことに嫌悪を抱き、無理矢理、自身から引き剥がした。
そしてその相手が和弥にとって一番会いたくない相手であると認識した途端、あからさまに迷惑であるという態度をとった。

「もう!和弥っていつも冷たいんだから」

少女は和弥の態度にも怯むことなく、そのよく通る声で文句を言う。

「黙れ。何しに来た」

ギロリと少女を睨みつける和弥。
少女の後方にも1人の男子学生が立っていることに気付いた和弥はそちらに視線を向けた。

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