封印せし記憶
助力


掴まれた手首を庇うように胸の前でギュッと握り締め、カタカタと震えている静菜。

「おい。朝日奈」

名前を呼べばビクッと身をすくめて脅える。

和弥はこの状況に困惑し、静菜にどう接していいのかわからなくなっていた。
静菜を立たせようと、手を伸ばせば、それに反応して「ゃっ…」と呟き、身を硬くして拒絶する。

お手上げ状態。
和弥にはこの状況を乗り切る手立てがなかった。

いつ誰が通るかわからないこの場所でいつまでもこうしているわけにはいかないと、焦りを覚えつつも頭を抱える。



和弥は考え抜いた末に強行突破を試みた。

静菜を荷物を持つように肩に担ぎ上げたのだ。
このままでは埒が明かないと判断した結果だった。

静菜はそれを拒むように「ゃぁ…っ」と声を上げたが、その抵抗は薄弱だった。
2つの鞄を逆の肩にかけた和弥は好都合だとばかりに、出来る限り足早に歩き出す。

そして急いで携帯を取り出し、着信履歴から修史の名を呼び出していた。



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