ベイビーベイビーベイビー

Accident3 綾乃

*****
 
 五月五日。

 祥吾のいる病室にも、春の暖かい日差しが差し込んでいた。

 窓の外から見える新緑は眩しくそれを反射し、拡散させ、これから始まる命の芽吹きを思わせる景色である。

 けれど病室の中を見れば、そこに在るのは、目の下に浮かぶ陰りがいつもより濃く、もはや表情を失ってしまった綾乃の姿であった。


 祥吾の手を握る義母の傍らで呆然と立ち尽くしていた綾乃は、医師に促されると小さく頷き、祥吾の病室から静かに廊下へと出た。


< 248 / 475 >

この作品をシェア

pagetop