ベイビーベイビーベイビー

Time is ―… 3 麻美

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 夕刻。

 営業を終えた吉田不動産の母屋の食卓には、魚を中心とした数種類の手料理が並べられ、立ち上がる湯気とともに良い匂いを充満させている。


 温かさに包まれたその空間は、吉田不動産を陰で支える妻の妙子が作り出した、幸福な家庭の象徴のようであった。


 しかし、生まれたその時からこの幸福に慣れてしまっている一人娘の麻美は、仕事から帰ると「ただいま」と言って足早に食卓の横を通り過ぎ、徐に携帯電話を鞄から取り出すと、台所に立つ母親に画面を見せて無邪気な笑い声をあげた。


 そして麻美を迎えた母親も、そのことに別段気に留めることもなく、差し出された携帯電話の画面を覗き、麻美と同様に何やら嬉しそうな顔を浮かべた。


 数日前には友人の幸せそうな結婚報告に落ち込み、同僚と愚痴をこぼしていた麻美であったが、しかしその笑顔にはいつも通り、いやそれ以上に張りがあり、快活さが増して見えた。




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