青瓶奇譚
かすみは
何度も振り返りながら
歩道の向こうへ
歩いてゆく
ジンジャーエールの空き瓶を
倒すゲームをしている若者たちの
歓声が聞こえた
ぼくは
もう一度かすみに触れたくて
手を伸ばすと
突然若者たちの群れが
ぼくとかすみの間を通りはじめる
群れは
長かった
「かすみ!かすみ!」
ぼくは大声で叫んでいた
伸ばした手の先には
冬の街の
冷たく乾いた空気があるだけで
ぼくの体は
指先から冷えていった