冬物語

友達



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「綺魅っ。頑張ってね!」


「ばあちゃんにこれ渡しといて。」


お母さんと兄の空に見送られ、あたしはここを離れる。



この間中学を卒業して、合格した県外の高校へ進学するあたしは今日、家を出る。



合格した高校の近所に住むおばあちゃんの家にお世話になることになった。


始めは、お母さんもお父さんも、お兄ちゃんでさえ反対した。


でも結局は、おばあちゃんにも丸め込まれ、無事入学することができる。


おばあちゃんは、5年前におじいちゃんが亡くなってやっぱり寂しいみたいだった。


兄の空に渡されたのは写真だった。
随分前に撮ったもので、あたしもお兄ちゃんもまだ幼かった。
そこにはおじいちゃんも写っていて、「現像したの渡してなかったから」と言って少し顔を赤らめながらあたしに渡してきた。


お兄ちゃんなりの気遣いだと思う。


おばあちゃんが寂しくならないように。



みんないるよ と遠回しに伝えているんだと思う。




兄にそれを渡され、あたしは受け取り頷いた。




「メールするから返してね。向こう着くまで頻繁にメール入れてね。心配だから。」



お母さんのその言葉にあたしは頷き、家を出た。







レイとの思い出は全て置いて――

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