コガネ《短》
コガネ

行儀よく棚に並んだ様々な表情の背表紙が、午後の光を受けて誇らしげに輝いている。

俺はいつものように窓際の席に座り、
黄金色が美しい、シンプルな表紙の分厚い本―タイトルは「ミツバチの生態」―を、行を飛ばしながら「適当に」読んでいた。

…そう。
本を読む時間なんて、口実でしかないのだ。


窓の外からは何かを叫んでいる野球部の野太い声。

外に顔を出し、手が届きそうなくらい近くに伸びる木の枝の間から空を仰げば
そこには相変わらずの、澄みきった青。



……ああ


今日もまた
ここは、平和だ。



…そして俺は、再び文字の列に目を落とした。




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