白銀の景色に、シルエット。
愛熱





 最近まで、暑い夏や熱が大嫌いだった。

 体は汗でベタつくし、日に何度もお風呂に入りたくなるし、熱で勉強に集中出来ない。

 良い事なんて何一つない夏の暑さが、熱が、大嫌いだった。


 それなのに、いつしか嫌いじゃなくなってたんだよ。

 アナタの熱が、あまりにも心地好かったから。








【愛熱。】








「華」


 ポンとあたしの頭を優しく撫で、隣に腰を下ろす一人の女子。

 蒸し暑い夜、辺りは真っ暗で、あたしは人気のない街路樹のいつものベンチに蹲っていた。それは、半年前からの日課。


「史依(シイ)」


 差し出された冷たいお茶を受け取り、あたしは目線を足許に戻した。史依は何も言わずに甘そうなココアを口に運ぶ。


「華んち暗かったから。ここかなって」

「ん」

「おじさん、まだ?」

「ん」

「そか」


 ぼぅっと薄暗い街灯が辺りを不気味に照らす。明るすぎず、寧ろ不気味な夜のこの場所はあたしを安心させた。


 あたしはずっと、暗い気分のままだから。


「離婚するくらいなら結婚すんな」


 ぽつりと言ったあたしの独り言は、史依によって会話になった。


「アンタそれ何度目?」

「知んない」


 膝の間に埋めたままの頭を、史依がポンポンと撫でる。


「あと二時間くらいなら付き合ってやれるよ。ファミレス行く?」

「イヤ」

「ワガママ娘」

「うるさい」


 史依はあたしの幼なじみ。昔っから何でも知ってるし、困った時は助けてくれるヒーロー。

 今だって、両親が離婚して堕落しているあたしをしつこく構う。あたしが独りぼっちにならないように守ってくれてる。
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