白銀の景色に、シルエット。
迷いながら、恋心。





 放課後の教室で突然、湖(ウミ)が言った。


「ねぇ、最近出来たゲームランドに行かない?」

「何、急に」


 小絃(コイト)は驚いて、鞄に教科書を詰めていた手を止める。


「そこのミラーハウスがすっごい面白いらしいの。暦(レキ)と十月(トツキ)誘ってさ、行こうよ」

「でも私、邪魔じゃない? せっかく幼なじみの水入らずに」


 小絃は湖の友達で、暦と十月は湖の家の隣に住む幼馴染みだ。一応顔見知りではあるが、小絃は自分が部外者ではないかと尋ねているのだ。


「なーに言ってんの! 大丈夫だよっ。ほら、暦と十月を誘いに行こ!」


 湖は小絃の手を引いて教室を後にした。

 目指すは暦と十月の家。















 着くなり、湖はドアを開けた。

 湖はもうこの家の家族同然なので、わざわざチャイムを鳴らす事はない。


「ただいま、おばさん」


 台所で夕食の準備をしている女性に声をかける。


「あら。お帰りなさい、湖ちゃん、小絃ちゃん」

「お、お邪魔します。いえ、してますっ」

「暦と十月なら、部屋にいるわよ」

「ありがと、おばさん」

「二人とも。夕食、食べて行ってね」

「わぁーい! おばさんの料理好きー!」

「す、済いません。ありがとうございます」


 小絃は一礼して、湖の後に続いて二階へ上がった。

 湖は相変わらずノックなしでドアを開ける。


「やっほ~! 暦、十月!」


 そして堂々と部屋に入る。
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