白銀の景色に、シルエット。
至福のひととき





 土曜日の午後。夜勤明けで疲れて眠っている君の横で、一人DVD鑑賞。

 ちょっぴり甘くてちょっぴり切ないラブストーリーは、一人で観るには少し寂しい。

 隣を見れば疲れきって熟睡してる君。大口を開けて、ロマンチックの欠片もない。


 そっと寄り添ってみると、


「わゎっ!」


 そのまま二人で倒れ込む。

 起き上がって彼を見るが、起きる気配もない。溜め息を零して立ち上がる。

 DVDを一時停止にして、彼の寝室から毛布を持って来る。それを彼にかけてやった。


 あぁ、なんて優しい彼女なんだろう。


「……実柚…?」

「まだ眠ってていーよ。夕方には起こしてあげるから」

「ごめん…」

「ん?」

「どこも、連れてってやれなくて…」


 夢現で私に話しかけている彼が可愛くて、私は思わず笑う。


「気にしないでいいよ」


 休日に二人でのんびりしていられるだけで充分。

 会えないよりは、会えてるこの時間は尊い。


 君が思うよりもずっと、私は幸せだよ?


「夜……どっか、行く?」

「無理しなくていいってば」

「んー…」

「心苦しいなら、夜はたくさん甘えさせてね」

「そんなんでいーんか…」

「そんなんでいーの」

「りょー、かい」


 すぅ、と再び寝入る彼。無防備な寝顔は可愛い。

 口にしたら怒られるから言わないけど。


「いつもお疲れ様」


 優しい労い、制止したままのテレビ画面に目を向ける。


「さーて、続き続き」


 これからが面白いところ。

 再生ボタンを押して、ドラマの世界へ。


 ──全ての楽しみは二人の夜に。





*END*
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