白銀の景色に、シルエット。
A stop station.





 気付いたら、電車に乗っていた。

 体が左右に揺れて窓からの景色は緩急に振り回されて。


 何故ここにいるんだろう。電車に乗っているんだろう。


 家に居た記憶はあるのに、その後何がどうなって電車に乗る羽目になったのか分からない。


 ガタンガタンという音と、風の擦れる音と、停車駅の案内をする車掌の声がする。


 私は何処へ向かおうとしているの?


 車掌の声に耳を傾けるが、まるで私自身が拒んでいるかのように、何を言っているのかが分からない。


 次は、××――


 ……××って、何処だっけ。


 身支度はきちんとしていた。

 服はしっかり厚着をしているし、ボサボサの髪だってちゃんとセットされている。

 バッグも持っているし、財布の中身もいつもなら入ってない額が入っている。

 何処かへ行こうと思って、電車に乗ったのは確かだった。


 お降りのお客様は、お忘れもののございませんよう――


 此処じゃない…。

 降りるのは、この駅じゃない。それを本能的に感じた。


 私は何処へ行くの?


 ガタンガタン…ガタンガタン…


 いつもは聞いているようで聞いていない電車の音が、何故か落ち着かせてくれる。


 どうして私、こんなに無気力なの…?

 体がダラリとして力が入らない。外の景色が、やけに優しい。

 本当に私、どうしちゃったんだろう。こんなに無気力になる事なんて滅多に無いのに。


 お待たせしました。次は、終点××……××です――


 終点…。終点?

 此処じゃない。行きたいのは此処じゃないのに。終点ってどういう事?

 戻って。お願い、此処じゃないの!

 私が行きたいのは――。
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