地球最後の24時間
 思いに反して、右手だけが別の生き物のようにアクセルを戻そうとしない。光が目に飛び込み、そこが出口であることを知らせている。

 しかしその出口もいびつに形を変え始めた。

 巨大なコンクリートが崩落してくる。見る見る塞がれてゆく光への道筋へ、俺は体をさらに伏せて突き進んだ。

 心臓が縮みあがる恐怖を押し殺しながらとっさにタンク上の上体を横にかわし、さらにバイクを傾けた。

 視界の端に、迫り来るコンクリートの細かなひびまで目に映る。その刹那、拓けた景色に覆われ、後方にトンネルの崩れる音と水が弾ける音が地を震わせて響き渡った。

 耳をつんざいていた轟音から解き放たれ、一転、静寂な世界に放り出されたような気になる。

(あさきちは……)
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