空の少女と海の少年


ーー目の前に佇む巨大な門は純白で
壮大な彫刻が施されているそれを見上げて
春と陸はおー、と気の抜けた声を出した


あれからなんとか脱出できないかと
試行錯誤した結果、無理だということが判明

仕方ないので街に入り情報を集めようと
ここまで来たのはよかったのだが


「おっきーいねー」

「でっけーなー」


いざここまでくると気が引ける
ここから先は能力者達の住処


「ここが…学園」


足を止めて奈々が呟く

今まで頑なに拒絶してきた場所
それが今、4人の目の前にある

入ったら戻ってこれるのだろうか
戻れなかったとしたらその時

無能力者である春はどうなるのか


奈々が考えを巡らせていると
その頭にぽん、と手が乗せられ
聞き慣れた低い声が降ってきた


「余計な心配はいらない。何があっても俺達で守ればいいだけの話だろ」


今までも、これからも


「春、行くぞ」

「うん!あっ、あっちに色々あるよー!」

「待てよ!俺を置いていくなって!!」


海斗が春の手を取って門をくぐると
その後を陸が走って追いかける

その背中を呆然と見つめていた奈々に
陸が振り返って大きく手を振った


「奈々!早くこいよ!」


そうね、何があっても
私達は今まで通りに守ればいい

奈々は迷いを振り払うと
大きく一歩踏み出して門をくぐった



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