スタッカート



午前の授業を終え、三階の音楽室への階段を上る。

ステンレス製のドアに辿り着き、鍵穴に鍵を差し込みそのまま右に回すと、カチャリ、という軽い音が耳に届き、私はピアノの楽譜を片手に持ち、年季が入っているせいで開きにくいドアを、空いているほうの手で力いっぱい押した。


ゆっくりと、ドアが開いていく。
動くたびに鳴る不快な音に、ぞわぞわと鳥肌が立った。


眉を顰めたまま玄関に足を踏み入れ、後ろ手で重いドアを閉じた。


履き慣れたローファーを踵から抜いて、大分色褪せた靴箱の、口をあけている一つに押し込む。



見慣れた音楽室を、改めて見渡してみる。



ピアノも、その他の楽器も、机もイスも。

すべてがひとつの狂いも無く、それぞれの定位置に並べられた空間。



そうしてまた、こうやって見ていると。




どうしようもなく、軽音部の部室が恋しくなった。
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