スタッカート


ビニールハウスに近づくに連れて、心地よいギターの音が徐々にはっきりとした音で聞こえてきた。

さっきまで耳を突いていた、ざくざくと草を踏みしめる音も、今はそれにかき消されてしまっている。


私はビニールハウスの前に辿り着くと、一呼吸置いて、所々穴の開いたシートを持ち上げ、中を覗き込んだ。




三歩ほど離れた近い距離に、その姿は在った。



ビニールの壁をすり抜けて入り込んだ陽を受け、柔らかな光を纏う黒髪。

組まれた長い足。

弦を押さえる、骨ばった指。

視線に気づいたのか、伏せられた切れ長の瞳がゆっくりと上がって



やがて、二つの視線が絡み合うと





ギターの音が、止まった。
< 159 / 404 >

この作品をシェア

pagetop