スタッカート

佐伯はその問いに肩眉をぴくりとさせて眉間に皺を寄せた。

「さっきの話の、“男の子”って、あいつの事か」

私の問いには答えず、そう言って冷えた目を向けてくる。
応えずに目を伏せると、小さくため息を吐かれた。

「何で……あいつなんだ」

苦しげに呟かれた言葉が、耳に痛く響いて

私は、佐伯が何故そんな声で、そんな言葉を言うのか――理解できずに、戸惑うばかりで。

それでも、「トキのことを知りたい」という気持ちが、トキと佐伯の間に僅かに見えた糸が、私の背を押した。

「トキの過去を、知ってるの?」

「……」

「……佐伯、」


苦しげに顔を歪めた佐伯は、目を伏せて、固く閉じていたその口を開いた。

その目は、鈍く光って揺れていた。




「あいつは――」








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