つま先立ちの恋
珍しく私が起きている時間に帰って来たお父さんとお母さんがダイニングで話しているのを聞いたんだ。


四つ葉物産の高崎会長の勇退。新美副社長の社長就任。それに伴う大幅な人事異動。高崎一族の力が削ぎ落とされた。


「それで、冬彦さんは?」


お母さんの言葉に私は体の芯が冷たくなった。


それまで二人が話していた内容は正直難しすぎてよくわからなかった。子どもの私には。

だけど、お母さんのその言葉に初めて事態の大きさを知った。


そうか。高崎会長が会長を辞めるってことはフーのおじいさんがいなくなるってこと。会社の中でのフーの立場も変わっちゃうんだ。


私はその場にしゃがみこんで、お父さんの言葉を待った。

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