つま先立ちの恋

◇ ◆ ◇

「…と、いう話でした」


まるで私はおとぎ話を読み終えるかのような口振りで、話を結んだ。

興味深そうに私を見ていた葵ちゃんとパペちゃん。


「フーさんに、いったい何があったの?」

そう聞く葵ちゃんの口の端にはまだクリームがついてる。

「んとね、フーはお父さんよりもおじいさんを尊敬してるの。そのおじいさんの会社に入るってことが決まってたんだけど、どうやらおじいさんにはあんまり歓迎してもらえなかったみたい」

「へ~、なんでまた?」

「なんか、よくわかんないんだけど。おじいさんにはフーとは違う、お気に入りの孫がいるって言ってた」

もちろん、これはオトナのウワサ話。小さかった私の頭の上で右から左へ流れて行く他愛もない話だった。

私は続ける。

「フーは優しいから。でもそれを見せようとしないの。本当は繊細で傷付きやすい人だから、弱味を見せたら終わりだって思ってる所があるんだよね」

隠してるつもりなんだろうけど、フー。私には通用しないよ。

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