つま先立ちの恋
「あ、悪い」

振り返るとそこには和泉がいた。文句を言ってやろうとしたら、またツンって髪が引っ張られた。

「いっ…」

「あ、ボタンが引っかかってる。取ってやるからそのまま動くな」

そう言って和泉の大きな手が私の髪に触れた。

「ちょっとぉ~」

「動くなって。…ほら、取れた」

和泉の手のひらから私の髪がさらさらと落ちた。

私は今度こそ文句を言ってやろうと振り返ったけど、

「あれ、和泉、なんで学ラン?」

和泉の格好の方が気になった。うちの高校はブレザーのはず。

そうしたら、私の隣りに座っていたヒカルちゃんが言った。

「和泉くん、応援団はもう集合なの?」

応援団??

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