姉弟道
「ごめんなさい、こんなことを松田くんに言っちゃって」

謝罪をした石楠花先生に、
「いえ、気にしてません」

俺はいつものように答えた。

「けど、誰かに聞いてもらいたかったから」

独り言を言うように、石楠花先生が言った。

俺は気づかないと言うように、それを受け流した。

それ以上、聞いちゃいけないような気がしたからだ。

「私の話はこれで終わり、次は松田くんの方ね」

俺に話を促してきた石楠花先生に、
「やっぱり、いいっすよ。

そんなにたいした話じゃないので…じゃあ、俺はこれで失礼します」

俺は石楠花先生に頭を下げると、逃げるようにその場から立ち去った。
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