東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
でも今日はあたしの指定席だよ。

そして、ずっとこれからも……。


おもむろにロムの腰に両手を回すあたし。

「やめろよ、くすぐったいっ…」

そう言って、少しだけ彼が笑って、だけどすぐにもとのぶっちょうづらに戻った。

あたしは手をほどいて彼に訊いた。

「ねぇ、お菊はどうやって乗ってたの?」

「………」

キクチ・ヨーコのことを話すのを一瞬ためらったみたいな感じの彼。

「……彼女はサドルの裏っかわと、荷台のはしっこを、それぞれ持って乗ってた」

「こう…ね? いいよ、出発しても」

彼は黙って、自転車のペダルをこぎはじめた。


こうやって至近距離でロムの背中を見ると、意外と広いのが分かる。ヤッパ男のヒトの背中なんだな、ってそのときはじめて認識した。

デカ島は、あたしの足を見て“オンナを感じた”って言ってたけど、あたしはロムの背中にオトコを感じるよ。

極私的な意見だけど、オンナの魅力が“胸”だとしたら、オトコの魅力は反対側の“背中”にあるって、あたしは思う。
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