鎖を解き放し者

奴隷

「……ここなら、ま、大丈夫だろ」
 
「そうだね。ちょっと見てくる」
 
 
 キョロキョロと見渡し、誰もいないことを確認してからフレイはセリオンを降ろして言った。
 
 無意味に暴れ、体力を消耗したのかそれとも揺れに酔ったのか、セリオンはフラフラと近くの壁によしかかる。
 
 すでに、喋る元気もない。
 
 そんな彼を一度も見ることもなく、ウィンは元気にまた駆け出した。
 
 あたりを探るために。
 
 フレイはそんな彼女を、軽く手を振り送り出す。
 
 そして、どうしようかと悩んだ表情で、疲れきったセリオンを見た。
 
 
 
「さて、どうするか?」
 
 
 そのつぶやきが聞こえたのか、セリオンは顔色が悪いながらもフレイを睨みつける。
 
 
「……うん。とりあえず、こっちこい!」
 
 
 だがフレイには、彼の睨みつけをまったくといっていいほど気にしなかった。
 
 逆にセリオンの襟首をつかみ、少し引きずるようにして近くのドアの方へ行く。
 
 
「お前、何をする!?」
 
 
 今まで一度もこのような乱暴な扱いをされたことのないセリオンは、一瞬思考が停止し反応が遅れた。
 
 しかし、すぐに状況を理解し大声を上げるが、すでに彼はドアの中側に向かって突き飛ばされるようにして入れられる。
 
 後ろ向きによろめきながら数歩下がり、そこで何かにぶつかって、それもろとも倒れた。
 
 
「……痛い」
 
 
 倒れた際、セリオンは何かの上にいた。
 
 その何かは、一言つぶやくように心情をのべる。
 
 
 
「あ~、わりぃ、アリア! お前、そこにいたのか」
 
 
 セリオンを中に入れたフレイが、彼の下敷きにされている人物に向かって、頭を軽くかきながら謝罪の言葉を言った。
 
 同時に、後ろ手でドアを閉める。
 
 セリオンは、下の方で声がしたときに慌てて動きなんとか立ち上がった。
 
 そして、先ほどまで下に引いてしまったものを見る。
 
 それは、自分と同じ十六歳ごろの少女であった。
< 21 / 21 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

†幻獣国物語り†雪凪編
久美禾/著

総文字数/2,126

ファンタジー3ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私達の住む世界と 違う世界がある 私達は その存在を知っている だけど彼等は知らない 彼等 決して交わらない 隣り合う隣人達は 犯してはならない 彼等の多くに 私達の存在を 気付かしてはならない だから私は護る 私達の王国と共に 二つの世界の均衡を崩すものから この私《王国の剣》が 我が友と 我が片割れ、雪凪と共に
†幻獣国物語り†金崋編
久美禾/著

総文字数/4,022

ファンタジー6ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
わたし達は普通じゃない わたし達の“ちから”を見た人は みんな逃げていった でも、わたし達の伯父さんは違う この“ちから”を認めてくれて 役に立つ方法を教えてくれた! だから、わたし達はこの“ちから”を 伯父さんのために使う!!
双子なシンデレラ
久美禾/著

総文字数/8,089

絵本・童話18ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
灰かぶり姫『シンデレラ』 もし、そのシンデレラが双子だったら!? 活発で明るいシンデレラ 優しく穏やかなシンデレラ 勇敢で柔軟な思考の王子様 負けず嫌いでプライドの高い魔法使い クールで忠誠心の固まりな王子の従者 普通のと少し違う物語 『シンデレラ』 今、開幕

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop