桜涙


「まぁ、戯れ言だけど…。」



 私、岡崎柚恵は桜の木を見ながら小さく呟いた。



「はぁ…学校行きたくない。」



 ここは、私の学校の近くにある公園。

 名前は桜ヶ丘公園。ありふれた名前。

 ここ桜ヶ丘公園には、たくさんの桜が咲いている。

 鮮やかな色の桜は春になると満開になり、春が来たと知らせてくれる。

 私はそんな公園の一番奥にいる。

 人気のないこの場所。

 そこには、一本の桜の木がポツリと立っている。私はその桜の木が好き。



「私に似てる気がするから…。」



 私はそっと木の幹に触れた。

 触れた瞬間、ボロボロと皮がめくれた。

 めくれた皮が指先にびっしりとこびりついたが、気に留めない。
 

 寿命なのか、その桜の木は弱い非力なものになっているようだ。
 


「今にも消えてしまいそう。やっぱり似てる…。」



 そう呟いた声は、あまりにもか細かった。
 

 別に消えるのは怖くない。

 むしろ、私にはそんな運命の方が合っている。

 そう、私は消えた方がいいのかもしれない。
 


「なーにやってるの?」


「えっ!?」



 いきなり後ろから声をかけられた。

 急いで振り向くと、そこには見知らぬ少年がニコニコしながら立っていた。



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