聞いて、姉貴
俺の手を勢いよく振り払ったかと思えば、真っ赤な顔をして走り去る姉貴。
その背中を、俺はただ呆然と見つめていた。
──自分が信じられない。
自分のしたことが。
「何…やってんだ、俺は」
静まり返ったリビングに、虚しく響く後悔の言葉。
いっそ、夢であってくれたら。
そう思って唇に触れれば、そこに残る確かな温度と感触の余韻。
紛れもなく現実なのだと思い知らされるのに、時間はかからなかった。