聞いて、姉貴


『……陸ー?』


そんな俺たちの会話も知らず、電話の向こうで不安げな声をあげる姉貴。


コイツ…分かっててやってんのか?

そう思えるくらい、姉貴の甘えた声は俺の心臓をいちいち刺激しやがる。


─…クソ。

たまにはガツンと言って、切ってやろうか…。

でも…。


『早く切りなさい!』


返答に困っている俺を、母さんが背後から急かし始める。


ったく…。
どうすりゃいいんだよ。


『…陸、ダメ?』


────う…。


『…分かった。いいもん、濡れて帰るから』


プッと、電話の向こうで頬を膨らませる姉貴の姿が目に浮かぶ。


……あー、もう!


「待て待て待て!分かったよ!行くから!今どこいんの?」


『…本当?ありがとう!陸大好き!!』



──あーあ。

もういいよ。
笑いたきゃ笑えよ。


所詮俺は、姉貴には叶わねーんだから。



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