クリアネス

最近のあたしは、泣いてばかりだ。


こんな姿を見たら、レオは何て言うかな。


「お前って、ほんと子供だな」


そう言って笑うんだろうか。



だけどこの止まらない涙だけが、今のあたしにとって生きているという唯一の証。




電車はレオの住む町に近づいていた。



「具合、悪いんですか?」



心配そうにたずねてくれるおじいさんに、あたしは首を振る。



「大丈夫です……もうこの駅で降りますから」



そうですか、とおじいさんは微笑んだ。











遠ざかっていく電車の音を背後に感じながら、ふと思った。


なんで、降りてしまったんだろうと。



こんなことしても、どうにもならないってことくらいわかっている。


だけどどうしても、もう一度会いたくて。



レオとつないだ手。


あれは離しちゃいけないものだって、やっぱり思えてならないから。



これが最後。


何度もそう唱えながら、携帯を押した。



不思議と恐くはなかった。




『―――』



何度目かの呼び出し音の後、突然電話がつながった。


だけど、声はない。

< 169 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop