Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜




夕暮れ



少しの間、
部屋の何もかもを染める様な
見た事がない位の
真紅の夕焼けが訪れた


ベランダに立つアズさんが
真っ赤に染まって
私は少し、怖くて


その途端―――

下からアニキが上がって来て

その顔は、アズさんの姿を
確認するみたいだった


「……あのね
ユカちゃんと、メアド、交換したよ」


アニキが
「……おう」

そう言って笑って
ポケットに手を突っ込んだまま
アズさんのオデコに
激突するみたいに、額をくっつけて
ゴン、という音と
アズさんの"ぐあっ"と言う叫び


「熱、だいぶ引いたな

…オマエ、
言わないと食わないからな
言っても治らねえし。

うどん、作ったから食え
とっとと下降りろ」


アズさんの頭をベチンと叩いて
私は驚いたけど
いつもの事みたいで
アズさんは、
「私は何度でも蘇るー」とか
アニメの悪者みたいな台詞を吐いて
ドアの外に出て
私はゲラゲラ笑った

アニキも笑ってる




「…青山も」



―――― 青山さんは

ベットに座って

自分の両手を開いて見ていた


「―― 青山竜治!!」


…青山さんは ハッとして
アニキを見た




「もう過去のアズは見るな

……アイツは生きてる」


下から緑川さんと赤池さんの
爆笑の声


青山さんを伴ったアニキと
私は一緒に下に降りた

―――見ると、
『彼』が泡だらけになって
アズさんを羽交い締めにしてる

アニキが爆笑して
「今度の餌食はオメエか!」と
お腹を抱えた


食卓には
お魚の煮物と、白いご飯

泡の噴き出したコーラと
ガラスポットに入った麦茶

そして、湯気の立った うどん
揚げが入ってたけど
ネギは小皿に入ってる

「アニキ、ネギは煮込まなかったの?」

「アズがネギ駄目だからな」

「そうなんだ?」

「アズ!玉子入れたから
玉子だけでもいいから食えよ!」

「全部食う!」

「 お 」


『彼』はシャツを脱いで
緑川さんから渡された濡れタオルで
体を拭いた



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