センチメンタルな季節【短篇集】
 そして今年も泣くのだろう。

彼が隣にいないという悲しさと悲しい悲しい昔のできごとが一気に私の涙腺を刺激して涙を誘う。わたしは道端で泣かないよう、唾を飲み込み一生懸命に涙をこらえるが、どうしてだか溢れ出てしまう。


 金木犀の花は星のようだと言ったあの人はわたしの手の届かない遠くへいってしまった。けれどその距離は決して遠くない。少し離れているだけだ。だから今年は、こんなに金木犀の香りがするのだろう。



宇宙に飛び散った金木犀たちはキチンと輝いているでしょうか
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