センチメンタルな季節【短篇集】



四月の東京は、まだ肌寒い。

闇夜に浮かぶ桜は、夕方の雨で大分散ってしまったのだろう。雨で濡れたコンクリートの道には桜の花弁が敷き詰められている。
車のヘッドライトに照らされ、それらがキラキラと反射した。

真夜中のタクシーが、その雨に濡れた花道を滑るように駆けていく。


夜の生暖かい風は女の首筋を通り抜けて男のアパートの玄関へと吹いた。
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