センチメンタルな季節【短篇集】
肌を刺すような北風に私の髪は乱れて、グロスもリップクリームも何もつけていない私の唇は乾燥して荒地のようだった。


私は舌先の唾液でその荒地を潤す。



「唇カサカサなんだから、舐めるなよ。」


何度も唇を舐めていた私に対して、彼が制止の声をあげた。


私は首を傾げた。


「カサカサだからこそ、舐めるんじゃないの?」
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