初恋 ~キミが僕に残したもの~
プロローグ
そのときの光景は、今でも昨日の事のように鮮明によみがえる。


セーラー服のスカートの裾が風に揺らぎ、ふんわりと少しクセのある茶色の髪が綿毛のように舞った。
白くしなやかな手から伸びる長い指先が、真っ直ぐにこちらに向って差し伸べられている。


「大丈夫?」


彼女が言った。

春の日差しのように柔らかな笑顔を口元にたたえ、覗きこむその瞳ははっきりした二重で、黒曜石のようにキレイだった。

僕はその瞳に飲み込まれ、思わず唾を飲み込む。

「ごめんね? 立てる?」

もう一度、彼女が言った。

清水のせせらぎのように心地の良い響きに返す言葉も浮かばなかった。


こんなキレイな人がどうしてこんなところにいるのか――そんな疑問が一瞬頭をよぎったが、すぐに我を取り戻す。

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