空の神衣

なんのために

 視線だけを背後に向けると、礼服に身を包んだ初老の男がいた。

 その顔には柔和な笑みが刻まれているが、優しさや温かみは全く伝わってこない。

「ひとつ聞きたい」

 津也は男に背を向けたままで問う。

「あんたは、何のために永遠の命が欲しいんだ」

「生への渇望は本能が訴えるもの。理由など必要なかろうに」

 男は顔色を微塵も変えずに答える。

「私は選ばれた王だ。死ぬことなど、あってはならぬ」

 男が頭上に手をかざすと、その身が青い鎧をまとう。

 それは、空を切り取ったような青さだった。

「喜べ。お前は、私が宿るべき器となれるのだからな」

 どこから現れたのか、男の手には剣が握られていた。

「その魂を砕き、私の器とする」

 勝ち誇った顔で、男は津也に剣を突きつける。
< 225 / 264 >

この作品をシェア

pagetop