空の神衣

ひとつのおわり

 無論、全てを受け入れたわけではない。

 だが、王としてなすべきことを躊躇う理由はない。

「ならば願う。勝者の魂に、宿るべき体を与えてくれ」

『新たな器を作るためには、それ相応の対価が必要です。あなたの体を差し出せば可能ですが、どうしますか』

 剣の声に、即座に答える。

「貴様が私なら、分かっていよう。私の体を、あの男に与えよ」

 アガートラームは実感していた。

 ただ生き永らえる命に価値などない。

 限りがあるからこそ、力の限り生きようとする魂が尊いのだ。

 ただ命を繋ぐことにだけこだわり、何のために生きるのか考えることも忘れていた自分は間違っていたのだと、今にして悟っていた。

 それを教えてくれた津也を救うことこそ、最後になすべきことなのだ。

 体が失われたなら、魂だけになってさまようだろうか。

 それとも、時間を飛び越えた反動で消滅するのだろうか。

 もう、そんなことはどうでもよかった。
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