ひと夏の片思い
お盆を過ぎた夜の海は淋しかった。私たちは砂浜を歩いた。
向こうの方に煌びやかなネオンが見えた。
「行く?」
山崎が言った。やっぱりポーカーフェイスで。
私は山崎に好きになってほしかった。遊びの関係になりたかったわけではない。「何言ってんの。」私は笑った。「帰ろう。」
山崎を振り返ると怒った顔をしていた。
「何気取ってんだよ。こっちだってお前なんか全然好きじゃねえよ!」
山崎が怒鳴るのを私は訳も分からず眺めていた。
「お前が誘ってほしそうだったから電話したんだよ。」
山崎の怒声は続いた。私はやっと意味が分かった。怒りが沸き上がってきた。
「馬鹿にしないでよ!」
私は道路へ走りだした。サンダルに砂が入って脱げかけたけど、それでも走った。
「いいのかよ?!」山崎が後ろから声をかけてきたけど構わなかった。
息を上げて道路に出ると知っている道の近くだった。涙が溢れてきた。泣きながら夜道を家へと歩いた。「本当にバカなんだから」明日千冬に言われそうだなと思ったらますます泣けてきた。そのまま一人歩いて帰った。涼しくて月の綺麗な夜だった。
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