あたしの神様

あたしはそのあとどうやってマンションまで辿り着いたのか、記憶がなかった。
唯、自分のひどくよれた格好を見下ろして、またマスコミに囲まれたのかしら、と思っただけだった。


性懲りもなく、あたしはテレビをつける。今日は水曜日だから、いつも郁と一緒に見ているドラマがあった。
あたしはそんなに好きではなかったのだけれど、郁はこのドラマがとても好きだった。続きを、郁は毎週楽しみにしていたのだ。

「……今日見れないんだったら、録画しとかなきゃ郁がすねちゃう」

あたしは郁が居ないとき、いつもするようにビデオデッキに空のビデオを突っ込んだ。録画ボタンを押す。

画面では、もうドラマが始まっていて、郁が好きな俳優の横顔が画面いっぱいに映し出されているところだった。

その俳優は、どこか桐原に似ていたことに、あたしは初めて気がついた。


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