君が為に日は昇る

『其の参、太陽と月』

轟音。


鮮やかな花火が打ち上がり、夜空に大輪の花を咲かせては消えていく。


今宵、富水の街は大いに盛り上がっていた。


それというのもこの日の前日、真田が出した伝令。それは富水の民を湧かせるに充分な内容であった。


その内容こそ、倒幕。


富水にて幕狼隊を迎え討ち、雌雄を決す。その後に増援を率いて東雲の待つ天ヶ原へ攻め入るというものであった。


幕府討つべしという旗印を今まで隠し続けてきた街だ。


その日の内に幕府管轄の役所は焼き払われ、施設は打ち壊され、役人は街を追われた。


侍も、農民も、商人も、男も女も関係なしと暴れまわった。


虐げられ、見下され、生きたままに殺されてきた民。


数日後には自分の街が戦火に包まれる。戦う術を知らぬ者は避難しなければならない。


だがそんな事は二の次だ。苦しみ続けた幾年月の記憶が民の心を駆り立てる。


溜まりに溜まった感情が爆発したかように夜通し踊り狂っていた。


時代は変わる。真田が時代を変えてくれる。


誰もが信じて疑わない。誰もが願って止まない。


変革の時を待ち、人々は踊る。
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