君が為に日は昇る

『其の弐、夜明けの光』

長い、長い夜が明ける。


真っ暗な闇の中。人々はもがき、そして苦しんできた。


生きながらに殺された、奴隷の如き日々。先の見えない暮らし。


人々を覆い尽していた絶望。


その闇を大きな、大きな光が照らした。


それは闇を掻き消そうとしている。


それは人々を救いだそうとしている。


それは、人々の。時代の。この国の闇を晴らす。


夜明けの光。


富水。今、この街でも明暗を分ける戦いが、始まろうとしていた。






静寂に包まれた富水。


昨晩、非戦闘員である民達は皆、近くにある集落へと避難していった。


勿論、お雪とお稲婆も。


数日前のお祭騒ぎが嘘のように通りは閑散とし、人の気配はない。


ここにいるのは彼らだけ。


街の入口に集まった四百名の侍達。


決して皆が皆、屈強な者ばかりではない。


貧弱そうな男、老人、五体満足ではない者。


寄せ集めの兵と言われても仕方のない外見。


しかしその身に宿る強き思い。街を守る為に、幕府を討つ為に、幕狼を討つ為に。


彼等は、命掛けの信念を掲げた、四百名の精鋭達である。


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