君が為に日は昇る
そこにあったのは





絶望だった。


「………!」

男衆は歩みを止めた。
皆、血にまみれ息を切らしている。


目の前には、火縄銃を構える幕府軍の姿があった。


気付くべきだった。余りに抵抗が無さすぎた。あっさりに突破出来すぎた。


しかしこの状況にありながら源五郎は笑っていた。他の男衆も笑う。


彼等にとってはもう勝利した戦なのだ。


これからもし幕府軍が山狩りを行っても家族は山を下り逃げ延びているだろう。


彼等は、勝ったのだ。


火縄に火がともる。
焦げた匂いが鼻に広がり、源五郎は静かに目を閉じた。


━お雪。お前には苦労ばかりかけた。
母がなく男手一つでこんな父親だ。
嫌になることもあったろう。それでも。
それでもお前は明るく、美しく成長してくれた。
お前が嫁に行く姿を見れないのが心残りだが、そこは夜太に任せるかな。
健康に気を付けて。元気でな。





━夜太。本当は俺の盾にするつもりでお前を拾ったんだ。
だけどいつからかな。情が移っちまったらしい。
お前の嬉しそうな面がたまらなく可愛く見えちまうようになった。
我ながら甘いと思う。
だけどよ。だけど…


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