君が為に日は昇る
『二、森に隠れ住まう者』
その昔、この国には『侍』と呼ばれる人間達がいた。
ある者は名誉の為、ある者は国の為、ある者は誰かの為に。刀を振るい、そして滅んでいった。
これは、誰も知らない『侍』達の物語。




 ━君が為に日は登る━





時代は混沌としていた。

数百年も昔、史上最も激化したと評される戦乱を勝ち抜き、国を治めた現在の幕府。


成立してから長い月日が経ち、徐々に私腹を肥やし、独裁的な政治を行使するようになった幕府。


力の弱い農民達を苦しめ、重い年貢を課すようなっていった。


それ対し『倒幕』を掲げ、自由を求め戦う反幕府勢力がいた。


後に『維新志士』と呼ばれる『侍』達である。


幕府成立以来、各地を満たしていた平和な空気は消え去り、時代は再び戦乱の世に突入するこことなる。


そんな戦乱とは全く関わりのない、静かな森。
川のほとり、大きな岩で釣竿を手に座る青年が一人。


蝉の鳴き声。


━もうちょっと。


小鳥のさえずり。


━あと少し。


水のせせらぎ。


━よし食い付いた!


水しぶきが勢いよく跳ね上がる。
青年が持ち上げた釣竿の先には見事な魚が掛っていた。
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