SAKURA

将来の夢






いつもの様に、放課後に勉強していた時だった。


買ってきたチョコを食べながら、ずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。



『和也クンは、何でそんな勉強してるの?』



和也クンはノートに書き込む手を休め、コーヒーを飲みながら話し始めた。


「医者になりたいんだ。」

『お医者さん?』


"医者"とは予想外だったけど、保健委員の仕事は真剣にやっていたことを思い出し、納得した。


「近所に仲良い小児科の先生いて、小さい頃凄いお世話になったんだ。

俺も、あんな風に助けたいって。


子供好きだし。」



まだ高1なのに、将来のことちゃんと考えてるんだ…



「吉川は?」



え?!



和也クンみたいな立派な理由ではないのですけど…



『テスト、いつも補習だから…』


小さく呟くと、コーヒーを飲んでいた和也クンが一瞬停止し、下を向いて小さく震え始めた。


『和也…クン?』



不審に思い、覗き込むと、
「くっ…

吉川らしい…ッ」

一生懸命笑いを堪えていた。



和也クンが笑ってるの初めてみた!


「ふっ…」


中々笑いの止まらない和也クンに、私までおかしくなってしまう。


『ちょっと!

笑いすぎでしょぉ?』




理由は何であれ、感情をあまり出さない和也クンがこんなに楽しそうにしているのが新鮮で、それをさせたのが私だって言うのが嬉しくて。


お腹を抑えながら笑う和也クンを見て、何だか胸がいっぱいだった。


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